解放された祖国での党、国家および武力建設について

    

―― 軍事・政治幹部に行った演説――

    (一九四五年八月二〇日)


    みなさん!

    第二次世界大戦で反ファシズム民主勢力が勝利した結果、日本帝国主義侵略軍は撃滅され、朝鮮人民は祖国解放の歴史的偉業を成し遂げました。この偉大な勝利には、祖国の解放と人民の自由、幸福のために、搾取と抑圧のない社会主義・共産主義の楽園を建設するために、日本帝国主義侵略者との苦難に満ちた闘争で英雄的にたたかった朝鮮人民の数十万のすぐれた息子、娘たちの貴い血がにじんでいます。

    朝鮮人民は、ほぼ半世紀にわたる日本帝国主義の植民地支配に終止符を打って自由と解放を獲得し、朝鮮人民には独立、繁栄の新しい朝鮮建設の明るい前途が開かれました。

    祖国解放の歴史的偉業が成し遂げられた今、われわれには新たな闘争課題が提起されています。われわれは勝利の成果に基づいて朝鮮革命を引き続き前進させ、朝鮮人民自身の手で富強な自主独立国家を建設しなければなりません。

    われわれは、この偉大な任務を成し遂げるために何をなすべきでしょうか。

    何よりもまず、朝鮮革命を揺るぎなく勝利へと導くマルクス・レーニン主義党を創立しなければなりません。これと同時に人民政権を打ち立てて、革命の基本問題である権力の問題を解決すべきであり、祖国と人民を防衛し、革命の成果を守る人民武力を建設しなければなりません。当面するこの三大課題は、解放された祖国で朝鮮革命を急速に発展させるために一日も遅らせることのできない緊急な革命任務として提起されています。

    われわれは抗日武装闘争の過程で築き上げた貴い革命事績と豊富な闘争経験に基づき、建党、建国、建軍の事業を力強く推し進めて、新しい朝鮮建設の歴史的任務を必ずりっぱに遂行しなければなりません。

    


    現段階において朝鮮共産主義者に課されているもっとも重要な歴史的任務は、朝鮮革命の参謀部であり、労働者階級の前衛部隊である朝鮮共産党を創立することです。

    革命の参謀部である労働者階級の革命的な党なくしては、勤労者階級をはじめ各階層の広範な民主勢力を革命の側にしっかりと結集することはできず、人民大衆を立ち上がらせて人民政権を打ち立て、人民武力を建設する事業をりっぱに遂行することもできません。

    朝鮮で統一的なマルクス・レーニン主義党を創立できる土台はすでに築かれています。われわれは抗日武装闘争の炎のなかで内外のあらゆる敵の策謀と破壊行為を粉砕する困難な闘争を通じて、朝鮮共産主義運動の初期に見られた本質的弱点を克服し、党創立の確固とした組織的・思想的基礎を築き上げました。

    われわれは何よりもまず、厳しい革命闘争の実践のなかで確かめられ鍛えられた清新な共産主義的中核を育成して、こんにち、わが党創立の確固とした土台を築き上げました。

    朝鮮民族の運命が危機に瀕していた一九三〇年代初期に、祖国の解放と民族の栄誉のため武器をとって立ち上がった朝鮮のすぐれた息子、娘たちは一五年間終始一貫してたたかい、この血みどろの闘争のなかで熱烈な革命家、すぐれた共産主義的中核に成長しました。

    抗日武装闘争の炎のなかで成長したわれわれ共産主義者は、一九二〇年代の朝鮮共産主義運動の宿弊となっていたセクト主義を徹底的に克服したばかりでなく、マルクス・レーニン主義の先進思想と理論で武装し、いかなる逆境にあっても動揺することなく、朝鮮革命の正しい路線を貫徹するために、青春も生命も惜しむことなく捧げてたたかってきた、もっとも徹底した革命家です。まさにそのために、われわれは人民大衆から絶対的に支持され愛されており、朝鮮人民から大きな望みをかけられています。このように革命闘争の実践で確かめられ、鍛練、育成され、人民大衆から絶対的に支持され愛されている共産主義的中核は、こんにち、解放された祖国でマルクス・レーニン主義党創立の確固たる土台となり、組織的根幹とならなければなりません。

    またわれわれは、抗日武装闘争期に日本帝国主義の策謀に便乗して革命隊伍を内部から切り崩そうと狂奔した分派事大主義者と偏狭な民族排外主義者の反革命的謀略とさまざまな破壊行為をそのつど克服しながら、革命隊伍を一つの思想、一つの意志で固く統一団結させ、共産主義隊伍のマルクス・レーニン主義的純潔を固守しました。

    これは、新しく創立されるわが党が、階級の敵とあらゆる日和見主義者のいかなる分派行動や破壊・謀略策動をもそのつど暴露、粉砕し、マルクス・レーニン主義党の生命である党隊伍の思想、意志の統一と団結を揺るぎなく守る重要な裏付けであります。

    われわれはまた、抗日武装闘争期に、日本帝国主義の厳しい監視と野獣じみた弾圧のもとでも屈することなく、労働者、農民をはじめ広範な勤労者大衆のあいだでたゆみなく政治活動を展開して、彼らを労働者階級の革命思想で武装させ、日本帝国主義に対する大衆闘争の実践のなかで鍛えることによって、党創立の大衆的基盤をしっかりと築き上げました。

    これは、朝鮮人民の真の利益の擁護者であり代表者であるわが党が、勤労者大衆のなかに深く根を下ろし、人民大衆との血縁的なつながりをもって健全に発展する揺るぎない裏付けとなります。このように、こんにちわが党は無からではなく、抗日武装闘争の長期にわたる困難な闘争の過程で築き上げた党創立の組織的・思想的準備に基づいて創立されるのです。

    しかしこのような土台が準備されているからといって、われわれは決して自己満足してはなりません。解放された祖国で党を創立し強化するための闘争には、かつての党創立の組織的・思想的準備活動に劣らず困難かつ複雑な問題が提起されることを予想しなければなりません。

    朝鮮の絶対多数の労働者は、これまで自己の革命的前衛部隊から組織的訓練と思想的教育を受けられなかったため、指導的階級としての組織的・思想的準備を十分に整えていません。また半世紀近い日本帝国主義の植民地支配によって、朝鮮の労働者、農民をはじめ各階層の人民大衆の頭には、日本帝国主義によって植えつけられたさまざまの古い思想が少なからずしみこんでおり、そのうえ朝鮮共産主義者に対する日本帝国主義者とその手先の途方もない誹謗中傷と悪宣伝のため、少なからぬ人々が共産主義に対し疑惑と偏見を抱くようになりました。これは、わが党が広範な勤労者大衆のなかに深く根を下ろして、大衆の支持と信頼を勝ち取り、大衆との血縁的なつながりをもって党を組織的、思想的に拡大、強化するうえで少なからぬ障害となるでしょう。

    また、かつてヘゲモニー争奪に目がくらんで派閥争いに没頭し、朝鮮革命を破壊した分派分子と革命の裏切り者が再び革命家の仮面をかぶって現れ、純真な勤労者大衆を欺瞞し、翻弄しようと企むであろうことも予想しなければなりません。さらに三八度線を境にして、祖国の南半部にアメリカ帝国主義侵略軍が進駐するようになることを考慮するとき、今後われわれの活動は多くの難関に直面することになるでしょう。

    われわれはまさに、このような情勢のもとで党を建設し、人民政権を樹立し、反帝反封建民主主義革命を遂行して、富強な自主独立国家を建設しなければならないのです。

    では、朝鮮でマルクス・レーニン主義党をどのように建設すべきでしょうか。

    われわれはまず、苦難に満ちた抗日武装闘争で鍛えられ育成された共産主義者を中核として、統一的な労働者階級の党である朝鮮共産党を一日も早く創立しなければなりません。言うまでもなく、国内で活動していた一部の共産主義者は必ずしも組織的に鍛練されているとは言えず、またセクト主義の思想的毒素を一掃しているとも言えません。しかし、われわれには長期の武装闘争で鍛えられ、洗練された朝鮮革命の頼もしい根幹部隊が準備されている以上、彼らをためらうことなく信頼し、度量をもって活動するならば、彼らは正しい革命の道を進むようになるでしょう。このようにしてのみ、われわれは共産主義隊伍の分裂を防ぎ、革命隊伍の統一と団結を守り、労働者階級をはじめ広範な革命勢力を党のまわりに一枚岩のように結集することができるのです。

    朝鮮共産党は決して少数の共産主義者の組織となってはなりません。朝鮮共産党は労働者、農民をはじめ広範な勤労者大衆のなかに深く根を下ろした大衆的な政党とならなければならず、新しい朝鮮の建設を指導する、洗練された革命の参謀部とならなければなりません。それゆえわれわれは、労働者、農民、進歩的な知識人のなかから、勤労者大衆の利益のために犠牲的にたたかい、民主主義的自主独立国家の建設のためにもっとも模範的かつ前衛的な役割を果たす、すぐれた人々によって党の隊伍を急速に拡大しなければなりません。

    またマルクス・レーニン主義党の組織原則に立脚して、分派のない全隊伍の思想、意志および行動の統一を保障し、すべての党員をマルクス・レーニン主義の思想と理論で武装させ、鉄のような自覚的規律を確立し、民主主義中央集権制の原則を堅持しなければなりません。とくにわれわれは、党組織の建設において政治的投機分子と分派分子の謀略策動と分派行動を高度の革命的警戒心をもって注視し、それをいちはやく摘発し粉砕しなければなりません。

    わが党が朝鮮革命の参謀部としての使命と役割をまっとうするためには、党の基本的中核である党幹部を政治的、思想的にしっかりと準備させなければなりません。党幹部は将来の朝鮮革命の運命を決定づけるもっとも重要な力量です。すぐれた共産主義的な党政治幹部の陣容を固め、それを絶えず拡大することなしには、党の指導的役割を高めることも、内外のあらゆる敵をしりぞけて富強な自主独立国家を成功裏に建設することもできません。したがってわれわれに提起された緊急な課題は、党を創立する活動とともに、マルクス・レーニン主義の思想と理論で武装し、党の路線と政策を擁護し、実践することのできる有能な党幹部を育成することです。このために、われわれはまず党幹部訓練班から組織しなければなりません。

    広範な大衆をわが党のまわりに結集し、人民大衆のあいだで指導的地位を確立するためには、職業別、階層別の大衆団体の結成を同時に推し進めなければなりません。党は広範な人民大衆との血縁的なつながりをもつことなしには真の革命組織となることができず、大衆の擁護と支持を受けずには労働者階級の前衛部隊としての役割を果たすことができません。党と革命の側に多くの大衆を結集するか否かは、党の運命と革命の成敗を左右する要の問題です。したがって革命組織の活動の第一歩は、つねに大衆に対する組織・政治活動から始めなければなりません。

    われわれは日本帝国主義植民地支配のもっとも暗たんたる時期にも、広範な人民大衆のあいだに革命の種子をまきつけ、あらゆる難関と障害を克服してそれをねんごろに育み、実を結ばせ、大衆の力に基づいて革命を勝利へと導きました。すなわち朝鮮共産主義者の指導的中核勢力も、組織化された大衆のなかから生まれ、広範な大衆の積極的な支持と擁護のもとで成長したのです。

    したがって党と大衆を結ぶベルトである大衆団体を組織することは、党を組織的、思想的に強化し、革命勢力を固め、党の指導的役割を高めるうえで重要な意義をもちます。

    大衆団体を建設するにあたっては、まず党の後続隊であり、革命の未来である青年を組織に結集しなければなりません。

    新しい社会の主人公であり、富強な祖国建設の頼もしい担い手となるべき青年大衆を党のまわりに結集することは、祖国の将来の運命にかかわるきわめて重要な問題です。それゆえわれわれは、革命運動発展における青年の使命と役割を正しく認識し、武装闘争の全期間にわたって青年運動につねに深い関心を払ってきました。党創立の組織的根幹を準備することも、抗日遊撃隊を創建し強化することも、共青活動から始めたのであり、共青をはじめとする青年組織の活動を強化して多くの青年を熱烈な革命闘士に育成したのです。

    われわれはこの経験を踏まえて、青年労働者をはじめ農村青年、学生など広範な青年大衆を民主的青年団体に結集して組織化された政治的部隊を編成し、それを新しい祖国建設の先頭に立って勇敢にたたかう先鋒隊に、鉄の組織規律をもつ不敗の革命隊伍につくり上げなければなりません。

    わが国の社会の全構成員の半数を占める女性を組織的に結束することは、革命勢力を拡大、強化し、富強な新しい祖国の建設を促進するうえで重要な意義をもちます。

    われわれは抗日武装闘争期の女性運動の経験を生かし、わが国の具体的な実情と新たな情勢の要請に即して勤労女性を広範に結集する女性同盟を結成しなければなりません。

    朝鮮の女性は、日本帝国主義の中世的な植民地支配と封建的な束縛によって二重三重のさげすみと抑圧を受けてきたため、強い革命意識をもっています。とくに抗日武装闘争期に朝鮮のすぐれた勤労女性は、祖国の解放と民族の栄誉のために、女性の社会的解放と自由のために、男子に劣らずりっぱにたたかってきました。共産主義的世界観が確立し、試練のなかで鍛えられた女性革命家たちは武器を手にとって、白雪の険しい山並みを乗り越えて勇敢にたたかい、銃剣が林立する敵陣のなかでも、中世的な拷問や断頭台の上でもいささかもひるむことなく革命的節操を固く守り、共産主義者としての栄誉を守り通しました。

    われわれは聡明で勇敢な朝鮮女性のこのようなりっぱな闘争の歴史を受け継ぎ、すべての女性に新しい祖国建設の重要な一翼を担わせなければなりません。

    大衆団体の建設においては、労働組合の結成も同時に推し進めなければなりません。新しい朝鮮の建設で労働者階級の果たすべき役割はきわめて重要です。労働者階級は内外のあらゆる敵の破壊・謀略策動から革命の成果を守り、富強な自主独立国家の建設でつねにその先頭に立ち、実践的な模範によって大衆を導いていかなければなりません。そのためには、短時日のうちに労働者を労働組合に結集して組織的、思想的にいっそう鍛え、労働者階級が新しい民主朝鮮の建設で自己に負わされた歴史的任務をりっぱに果たすようにしなければなりません。

    人口の八〇%以上を占める農民を組織的に結集して、革命闘争に立ち上がらせることは、現段階においてわれわれ共産主義者に課されているもっとも重要な任務の一つです。

    朝鮮の農民は日本帝国主義の植民地的農村収奪政策と愚民政策によって人間以下の境遇におかれ、現代文明から疎外されてきました。

    五〇〇〇年の悠久な歴史と燦然たる文化をもつ英知ある朝鮮民族固有の文化を取り戻し、政治、経済、文化のあらゆる分野にわたって一日も早く世界の先進国の隊伍に列するためには、何よりもまず人口の絶対多数を占め、もっとも立ち後れた状態におかれている農民大衆を、日本帝国主義思想の残りかすと封建的な因習から完全に解放しなければなりません。農民大衆の階級意識を高め、彼らを愛国主義思想と集団主義の精神で教育し、新しい祖国の建設において労働者階級とともに主力部隊としての役割を遂行させるためには、農民同盟を結成し、すべての農民をそれに固く結集しなければなりません。

    


    革命における基本問題は権力に関する問題です。朝鮮の真の愛国者であるわれわれ共産主義者と革命的な人民は、日本帝国主義を撃滅し、解放された祖国の地に真の人民の政権を樹立し、繁栄する新しい祖国を建設するため、長期にわたる抗日武装闘争を展開してきました。苛烈きわまる血戦の日々に、われわれはつねに解放された祖国で人民に自由と幸せをもたらす人民政権を打ち立てるため、あらゆる苦しみにうちかち、死をも恐れず血みどろのたたかいを展開してきました。

    人民が国家の主人となる富強な自主独立国家を建設しようというわれわれの念願は、祖国解放の聖なる偉業が達成されたことによって、ついにかなえられるようになりました。

    それでは、解放された祖国にわれわれはいかなる政権を樹立すべきでしょうか。

    朝鮮は日本帝国主義の中世的な植民地支配によって資本主義の発達が抑制され、長い間植民地・半封建社会としてとり残されていました。そのため、こんにち朝鮮人民には、依然として反帝反封建民主主義革命を遂行すべき課題が提起されており、権力の問題では現段階での朝鮮革命の性格と任務から、全朝鮮人民の利益を代表する民主主義人民共和国を樹立すべき課題が提起されています。

    民主主義人民共和国は、必ず朝鮮人民自身によって建設されなければなりません。朝鮮人民は自らの手で自己の政権を打ち立てる力をもっており、われわれには人民政権建設の豊かな経験があります。

    われわれは抗日武装闘争の初期に遊撃根拠地―― 解放地区で、分派事大主義者の極左的な「ソビエト」政府路線を粉砕し、真の人民の政権である人民革命政府を建設した経験をもっており、祖国光復会綱領の第一条で人民政府樹立の課題を提起し、そのために長い間たたかってきました。この経験に基づいて人民政府路線を堅持し貫徹するならば、解放された祖国に新しい型の人民政権をりっぱに樹立することができるでしょう。

    民主主義人民共和国を建設するためにはまず、労働者階級の指導のもとに広範な農民大衆と知識人、良心的な民族資本家など各階層の民主勢力を結集する民主主義民族統一戦線を結成し、これに基づいて人民政権を樹立しなければなりません。この統一戦線は民主主義人民共和国の建設をめざす統一戦線であるから、これには国の真の主人である労働者、農民をはじめ勤労インテリ、都市の小ブルジョアジー、良心的な民族資本家など民主主義的独立国家の建設を望む各階層の愛国的民主勢力が含まれるべきであり、親日派、民族反逆者などいっさいの反動勢力が潜り込めないようにしなければなりません。

    そして祖国と人民に献身的なすぐれた愛国者を抜擢し、彼らを中核として人民政権機関を固めなければなりません。

    こうして人民政権が労働者階級の党の指導のもとに、労働者、農民をはじめ民主主義民族統一戦線に結束したすべての愛国的民主勢力を自己のまわりに最大限に結集し、親日派、民族反逆者、反動的な地主、買弁資本家などいっさいの反革命勢力を孤立させ、それに反対する強力な階級闘争の武器となるようにしなければなりません。

    政権の建設にあたって、われわれ共産主義者は絶対に受身の立場をとってはならず、消極的になってはなりません。民主主義民族統一戦線を結成する活動や人民政権を打ち立てる活動で、共産主義者はつねに主動的で積極的かつ指導的な役割を果たすべきであり、各階層の人民大衆を導く先駆者となり組織者となるべきです。われわれが革命戦友の貴い血の代価として解放を勝ち得た祖国の地に政権を樹立する活動を少しでも緩めるならば、それはまさに犠牲となった戦友の念願を裏切ることであり、朝鮮人民の民族的宿願に背くことになります。それゆえ最大限の精力を傾けて、ほぼ半世紀もの間暗黒が支配していた三千里の国土に、人民の自由と解放の旗じるしである人民政権を一日も早く樹立し、祖国の繁栄と子孫万代の幸福の前途を切り開かなければなりません。

    政権樹立の闘争は、誰が誰をという激烈な階級闘争です。

    今後、解放された祖国に生じた複雑な情勢に乗じて、かつて共産主義者の仮面をかぶって革命を破壊した分派分子や日本帝国主義者の手先に転落した民族主義者、はなはだしくは親日分子までが愛国者を装って政権機関を奪取し、破廉恥な政治的野望を実現しようと狂奔するであろうことを、われわれは忘れてはなりません。したがってわれわれは、最大の革命的警戒心をもって敵のあらゆる陰謀と破壊策動をことごとく摘発し粉砕しなければなりません。

    それでは現段階において人民政権が実施すべき行動綱領はなんでしょうか。

     1 労働者、農民、進歩的知識人、良心的な民族資本家、良心的な宗教家などわが国の愛国的民主勢力をすべて結集して民主主義民族統一戦線を結成し、それに基づいて民主主義人民共和国を樹立すること。

     2 言論、出版、集会、結社、信教の自由を保障し、一八歳以上の男女公民には選挙権と被選挙権を保障すること。

     3 日本帝国主義者、親日的な朝鮮人および民族反逆者が所有していたすべての工場、企業、鉄道、銀行、船舶、農場、水利機関といっさいの財産を没収し、国有化すること。

     4 日本人と親日的な朝鮮人反動地主の土地を没収し、土地をもたないか、少ししかもたない農民に無償で分与すること。

     5 日本帝国主義の残存勢力と日本帝国主義が残したいっさいの残存要素を一掃すること。

     6 八時間労働制と労働者の生活を保障する最低賃金制を実施し、失業労働者に職業を保障すること。

     7 文化人と技術者を社会的に優遇し、彼らの生活条件を改善すること。

     8 朝鮮人民の輝かしい悠久な民族文化を復興し、わが国の言葉と文字を発展させ、漸次義務教育制を実施すること。

     9 人民の収入と生活程度に基づく累進所得税制を実施すること。

       日本帝国主義の金融機関およびいっさいの高利貸金、債権を無効とすること。

       政治、経済、文化の各分野にわたって男女平等権を実施し、同一労働に対し同一賃金を支払うこと。

      人権じゅうりんといっさいの悪刑を禁止すること。

      解放された朝鮮民族と独立したわが国に平等に接する民族および国家との友好をはかること。

    


    わが国が完全な自主独立国家となるためには、国家と民族を防衛し、革命の成果を守る強力な民族軍隊を創建しなければなりません。

    民族軍隊をもたない国家は、完全な自主独立国家とは言えません。朝鮮が日本帝国主義侵略者に占領された主な原因の一つは、強力な民族軍隊をもっていなかったことです。かつて李朝封建支配層は人民弾圧の道具として一定の軍隊をもっていましたが、それは無気力なきわめてとるに足りない兵力でした。そのような軍隊では、近代兵器で装備した正規の日本帝国主義侵略軍を防ぐことはとうていできませんでした。

    われわれが解放された祖国に人民政権を樹立すると同時に、強力な革命軍隊を創建しないならば、血をもって勝ち取った革命の成果を帝国主義者の武力侵攻から守ることはできず、再び亡国の民の悲惨な歴史を繰り返すことになるでしょう。

    とくに今、祖国は複雑な情勢におかれています。日本帝国主義者は敗退しましたが、祖国の三八度線以南にはアメリカ帝国主義の軍隊が進駐するといいます。もちろんアメリカ帝国主義は今度の第二次世界大戦で形式上は連合軍の側に立って日独伊ファシズムとたたかい、また対日戦に直接参加しました。

    しかしわれわれは、アメリカという国がどのようにして生まれ、どのように膨張してきたかをよく知っています。アメリカ帝国主義は一九世紀末から朝鮮に侵略の触手をのばし、一九〇五年には桂――タフト秘密協定を締結して日本帝国主義の朝鮮占領を助けました。

    久しい以前から虎視眈々と朝鮮を狙ってきたアメリカ帝国主義侵略軍が祖国の南半部に駐屯するようになったこんにちの政治情勢は、われわれに革命的警戒心をいっそう高めることを求めており、帝国主義侵略者から祖国と民族を防衛する強力な民族軍隊を創建することを遅らせることのできない緊急な課題として提起しています。

    われわれはいかなる難関に直面しようとも、必ず自力で正規の革命軍隊を建設しなければなりません。

    われわれには正規の革命軍隊を建設できる確固とした土台があります。日本帝国主義植民地支配のもっとも暗たんたる時期に、朝鮮の共産主義者は先進的な労働者、農民、愛国的な青年でわが国最初の革命的人民武力である朝鮮人民革命軍を組織し、人民革命軍の隊員たちは一致団結して祖国の解放と民族の栄誉のために勇敢にたたかいました。民族の独立と社会的解放をめざす一五年有余にわたる抗日武装闘争の炎のなかで朝鮮人民革命軍は不敗の鋼鉄の隊伍に、政治と軍事を兼ねそなえた幹部軍隊に鍛えられ、育成されました。これはこんにち、正規の革命武力を適時に創建できる確固とした土台がすでに築かれていることを意味します。

    われわれは抗日武装闘争の試練のなかで鍛えられ、育成された革命闘士を根幹とし、労働者、農民をはじめ勤労人民の子弟で革命軍隊を創建しなければなりません。革命武力の建設においては、抗日武装闘争期に人民革命軍の隊員のあいだで発揮された祖国と人民に対する熱烈な愛と敵に対する燃えたぎる憎しみ、いかなる艱難辛苦にもうちかち自力で立ち上がる革命精神、上下一致、軍民一致の伝統的気風、革命的同志愛と人民的活動作風、自覚的な軍規と革命的な生活秩序などを受け継ぎ、この精神で新たに創建される革命軍隊を教育し育成しなければなりません。

    革命武力の建設は、国家と人民の危急存亡にかかわるきわめて重要な問題であるため、われわれ指導的中核幹部はすべてこの活動に直接参加し、その先頭に立たなければなりません。われわれは全力を尽くして、解放された祖国にマルクス・レーニン主義思想で武装した不敗の人民武力、正規の革命軍隊を一日も早く創建しなければなりません。

    
*   *   *


    みなさん!

    解放された祖国で党、国家および武力建設の三大課題が成功裏に遂行されるか否かは、われわれ、つまり共産主義的指導中核の役割に大きくかかっています。

    この課題を成し遂げるためには、何よりもまず労働者、農民をはじめ各階層の広範な愛国勢力を教育して革命の側にしっかりと結集し、解放の喜びで高揚した人民大衆の政治的熱意を建国事業に積極的に動員しなければなりません。このような活動に基づき、広範な人民大衆の積極的な支持と参加を得てこそ、党、国家および武力建設の三大課題を成功裏に成し遂げることができるのです。

    言うまでもなく、この三大課題の遂行途上には予測しがたい多くの難関と障害が横たわり、複雑な問題が数多く提起されることでしょう。しかし、われわれ共産主義者は難関を恐れず、いかなる逆境にあっても最後の勝利を確信する革命的楽天主義者であり、いかに困難な課題であってもあくまで貫徹せずにはおかない革命家的気風の持ち主です。われわれが、厳しい抗日武装闘争の日々に草を枕に野宿し、いかなる艱難辛苦も死も恐れず、ひたすら祖国の独立と民族の解放のためにたたかい抜いて勝利した不撓不屈の闘争精神で活動するならば、いかに困難な課題であっても十分成し遂げることができるでしょう。

    われわれ共産主義者は、地位や功名、栄達を望み、栄耀栄華のために革命に参加するのではなく、祖国の自主独立と人民の自由と幸福のために、社会主義・共産主義のためにたたかうのです。われわれはどこでどのような仕事をしようとも、その貴賎や大小、軽重を問うことなく、課された職務を光栄として忠実に果たし、一意専心、祖国と人民の利益のために、革命の利益のためにすべての力と知恵を捧げなければなりません。

    われわれはいつどこにあっても人民大衆の力を信じ、それをよりどころにして活動しなければなりません。そのためには人民大衆のなかに深く入って彼らを教え、彼らから学ぶため積極的に努力し、また人民大衆の要求と希望をいちはやく把握してそれを解決し、彼らと生死、苦楽をともにし、人民大衆の支持と信頼を得なければなりません。

    われわれがこれから党と政権と人民武力を建設するためには、より多くのことを知らなければなりません。革命的熱意だけで、この課題を成功裏に成し遂げることはできません。われわれはマルクス・レーニン主義の先進思想と理論を絶えず学習し、先進国ソ連の経験を深く研究し、また実際の活動の過程で経験を一つひとつ蓄積して、自らを政治的、理論的に、実務的にりっぱに準備していかなければなりません。

    もちろん、われわれは革命活動を行ってきた経験からすれば、決して幼いとは言えません。しかしいかに革命活動の経験が多くても、自らを絶えず政治的に鍛えなければ、高慢になり、安逸に流れ、発展する現実から立ち後れて、革命幹部としての役割を果たせなくなるばかりか、革命の落伍者になりさがってしまうでしょう。それゆえ革命活動の実践の過程でそのつど欠陥を探し出して是正し、同志的な批判と自己批判を強め、自らを絶えず検討することによって、たゆみなく政治的に鍛えなければなりません。

    われわれは自分自身を絶えず鍛えるばかりでなく、党および国家活動の各分野で活動する新しい朝鮮の幹部のなかから、高い地位を欲しがる栄達主義者や官僚主義者が生まれないように積極的にたたかわなければなりません。

    これまでの経験は、栄達主義者は結局、分派分子に転落することを示しています。

    また高慢、官僚主義、主観主義、自由主義などいっさいの否定的要素の発生を防止し、日本帝国主義のあらゆる残存要素と容赦なくたたかわなければなりません。

    このようにして、われわれは一日も早く労働者階級の前衛部隊である共産党を創立し、それを強力なマルクス・レーニン主義党に発展させるべきであり、全力を尽くして人民政権を打ち立て、正規の革命武力を建設する活動を強力に推進しなければなりません。